2016年

8月

28日

涼しくなって、楽の2

 ひどく暑い間は虫も出て来ない。秋になり始めると出て来るのだ。

 蚊柱なんてのも残暑の頃から立ち始めるけれど、浅草から隅田川を渡ったあたり、本所などでは冬でも蚊柱が立ったなんて言われる。

 浅草をエンコというのは、浅草と言えば六区、六区は公園六区で、露天商の符丁で公園をひっくり返せば「エンコ」になるって話だから近代になってからの言い方になる。

「唐獅子牡丹」という歌に出てくる「幼なじみの観音様」は浅草寺の観音様で、界隈で生まれ育った者が倶利伽羅紋々を背負ってしまったという歌である。

 親からもらった体に悪戯して刺青を入れるような不孝者の幼なじみをやってる観音様の懐の深さは、浅草という町の、何でも受け入れてくれるところに見合っている。何でもだから、嘘と本当が隣り合わせで、つまり自由にやってる。

 こないだ浅草で道を教えた支那人はやたらとタトゥー入れてたが、浅草なら問題ない。

 

 台風の風が収まって、区役所が町中にDDTを散布する頃、それでもボウフラのわく水たまりがあって、沢山の蚊が飛んでいた。東京とは言っても足立区の川沿いの町の昭和三〇年代、まだ犬殺しが野良犬を狩っていた時代だった。

 

 北区の中里では、町が進歩的な政策でDDTの空中散布を敢行したのは後から知った。